P006 ニューヨーク市における公園の公平利用に関する考察 〜ハイラインを中心に〜
ニューヨーク市における公園の公平利用に関する考察 〜ハイラインを中心に〜
〇TIAN YUAN1
1 京都芸術大学大学院芸術研究科
要旨
ニューヨーク市は米国最大の都市公園システムを有する都市である。1970年代のオイルショックを契機とする公園維持への政府予算の減額により、公的予算と民間寄付による二重資金調達モデルが形成されることとなった。その結果、制限のない民間寄付とその民間寄付の再分配のアンバランスにより、ニューヨーク市の各公園には、発展不均等などの問題が見られるようになった。現在同市における多くの公園は地域住民に真に利活用されるような状況にはなっていないと考えられる。
この動向に対して、本発表は、同市にとって現代の「成功事例」とみなされているハイラインに着目し、その地域社会に対する負の影響について検証しようとするものである。。
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この投稿へのコメント
日本でも公園管理費の縮減が課題となるなか手本にされる面もあるニューヨーク市の公園管理の手法について、再考の余地を指摘するご研究と感じました。
戦前の東京市の公園の独立会計は収入の大きい公園からの資金をほかの公園の維持費に分配していたようですが、現代のP-PFIなどでもこうした考え方は可能でしょうか。
ご貴重なコメントありがとうございます。
確かに、各公園の持続可能な発展と質の維持という面から考えますと、P-PFI制度の導入によって収入を高くする公園からの資金を最もメンテナンスが必要な公園に資金を割り当てることは重要ではないかと考えます。
実際、アメリカでは、このような声や意見がこの前現れました。例えば、Daniel SquadronとBrian Kavanaughが提案した『The Neighborhood Parks Alliance Act』というものが存在します。しかし、ニューヨーク市の公園への民間寄付の一部を予定外の他の公園に割り当てることは、民間資金の公園事業への投資意欲を減少させる可能性があると指摘しています。そのため、ニューヨークと同様、日本のP-PFI制度の資金源は主に民間の企業や投資者からのもので構成されますので、この問題の対策をしないといけないと考えます。
現時点では、やはり公的資金の公園運営予算への資金提供の拡大と、最もメンテナンスが必要な公園に公的資金を割り当てることはより実行しやすい方針ではないかと考えます。
ご回答ありがとうございます。
確かに、寄付金だと目的外の公園には使いにくい部分がありますね。日本のP-PFIの場合、公園内での営業収益が見込まれますので、寄付金とは違った運用も可能なように思います。
今後のご研究楽しみにしております。
お返事いただきありがとうございます。
浦﨑先生のご指摘のとおりです。P-PFI制度とニューヨーク市から見られた寄付金制度には多くの相違点が存在しますので、P-PFI制度の資金をより柔軟に応用する可能性と余地もありますね。その点について、引き続き研究させていただきます。大変ありがとうございます。
兵庫県立大学大学院緑環境景観マネジメント研究科の学生です。
ポスターを拝見させていただきました。どうもありがとうございました。
私は、ハイウェイについて授業で初めて知りました。
廃線路の再生、まちの魅力・価値の向上など良い部分を知ることができたのですが、
TIANさんのポスターを通してハイウェイが抱えている課題を知ることができ、とてもよかったです。
公園の質を向上させるにあたって、いろいろな主体から力を借りて力を合わせることは必要だと思いますが、
「誰のための公園なのか」「地域の歴史・長い年月をかけて積み重ねてきた地域の固有のもの」
という視点は大事にしたいな、と考えさせられました。
最後にお願いです。
ポスターの内容を、授業で紹介させてもらえないでしょうか。
(ポスターの内容を簡単な文書にまとめたいです)
貴重な研究内容を受講生と共有することができたら嬉しく思います。
ご検討、よろしくお願いいたします。
ご貴重なコメントありがとうございます。
ご指摘のとおり、「誰のための公園なのか」「地域の歴史・長い年月をかけて積み重ねてきた地域の固有のもの」という視点は大事ですね。特に都市の風土性・地域性が均質化になり、一部の緑地空間が商業空間を侵食されつつある現在、ランドスケープデザインの創出にはこの視点を大切にしなければならないと考えます。
Ps:ポスターの内容を授業で利用しても構いません。データと参考資料の引用ルールを守れば大丈夫ではないかと思います。
TIANさま
お返事どうもありがとうございます。
「風土性・地域性」は緑地を考えるうえでなくてはならないものだし、
緑地を核としたまちづくりや地域づくりにもつながるものだと感じます。
ポスター内容の紹介について、快く承諾いただき、どうもありがとうございます。
吉武様
ことらこそありがとうございます。
そうですね、「風土性・地域性」の活用はこれからのランドスケープデザイン・造園・まちづくりのあり方の形成につながりますね。神戸芸工の小浦久子先生は現状に対しても、「最近の景観計画には同じような構成と基準で策定されている景観計画が増えているように思われる」と指摘し、既存の風景や街並みの文脈を活用し、将来を見通す視点を持って設計を行う例が少ないと述べています。そのため、「風土性・地域性」が充分に認識されていない現状の中で、今後のランドスケープデザイン・造園・まちづくりについて再考すべき課題ではないかと考えます。
TIANさま
ありがとうございます。
「風土性・地域性」を大切にしたランドスケープをデザインすることは、地域の価値を再発見することや価値の生かし方を見つけることにつながると思いました。そして、その土地固有の価値が共存していける社会は豊かなものだと考えます。
たくさんの学びをいただけました。
どうもありがとうございました。
TIANさん
地域住民の公平な利用という問題意識であれば,米国のパークディストリクトについて調べてもおもしろいと思いました。5つの州で導入されている,公園のためだけの特別区(組織)で,市内の全ての公園を税を別途徴収して運営しています。身近な公園も全て含むので,TIANさんの興味にあっているかもしれません。
赤澤さま
貴重なご意見を本当にありがとうございます。
米国のパークディストリクトに関する情報を是非調べさせていただきます。大変興味深いです。
民間資金を活用したリノベーションの成功事例として取り上げられることの多いハイラインの整備に対して、地域の満足度は高いと理解していましたが地価高騰などによる功罪を再考することも大切だと思いました。
貴重なごコメントありがとうございます。
ご指摘のとおり、ハイラインに対する一般的な印象といえば、ものすごく成功した再生事例であり、ランドスケープ・アーバニズムの代表作でもありますね。しかしハイラインがもたらした社会的影響を振り返りますと、様々な問題が生じました。ハイライン周辺の地価という要素だけを見ても、整備前の周辺物件価値はマンハッタンの中央値の92%があったのに対して、2011年までに周辺の物件価値は203%へと上昇しました。このデータを探した時、かなり驚きました。