P9 須磨海浜公園海岸松林の成長解析から見る地域景観の形成
須磨海浜公園海岸松林の成長解析から見る地域景観の形成
〇大国花菜1、前中久行2、野田泰史3、高蓋なつみ4、大野朋子5
1 神戸大学国際人間科学部
2 NPO法人緑の地球ネットワーク(GEN)
3 神戸市建設局公園部整備課
4 神戸市建設局公園部整備課
5 神戸大学大学院人間環境学研究科
要旨
本研究では須磨海浜公園内、住友家須磨別邸跡など古くから植栽されたマツの樹齢とその成長速度を明らかにし、歴史や文化と関連させて地域固有の景観形成について考察する。対象地再整備に伴い伐採されたマツ35本の年輪画像を解析した結果、樹齢平均45.6年、最大69年、最小18年、全体の平均年輪成長速度は0.44cm year-1であった。一方、明治、昭和に発行された文献には須磨海岸一帯について、「風光明媚」「名勝」「勝区」「風景絶佳」等、その景観を称えた表現が見られる。このことから、対象の地域景観要素として、健全に成長したマツ林の存在が不可欠であることが伺え、マツの樹齢の不均一さからも景観維持に継続的な植林が行われてきたことが推測される。
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この投稿へのコメント
【訂正】
表1に関しまして、「胸高直径」と表記していますが、「幹周」の誤りでした。失礼いたしました。
須磨海浜公園の再整備に合わせこの機会にしかできない調査で貴重な研究だと思います。
先人たちの努力が垣間見えますね。
広脇様
コメントありがとうございます。
今回、神戸市より貴重なマツのデータを提供していただき、須磨海浜公園という歴史的・文化的価値の高い場所の松林の樹齢・成長速度を調査することが出来ました。
また、資料調査から松林の存在が須磨という場所の別荘地や観光地としての発展に寄与してきたことが分かりました。今後さらに景観的・文化的利用、その価値をさらに明らかにするとともに、先行研究において報告された他の大規模公園の松林の成長との比較なども行っていきたいと考えております。
まとめのところの、樹齢60年以上では現存が困難とはどういうことでしょうか?生存?
松林の保全のために、伐採された樹齢や成長幅から、松林の松の生態を明らかにした貴重な調査であると思います。長期的な保全に向けて、おおよその寿命を知ることの大変重要なことだと思います。
當内様
コメントありがとうございます。
本来のマツの寿命から考えるとさらに高齢のマツが多く存在していてもおかしくないのですが、松くい虫による被害が発生していることや海岸の整備などの外的要因により、須磨海浜公園の環境では結果として「樹齢60年以上では現存が困難」だったのではないかと考えました。